成長痛
成長痛とは
成長痛とは、幼児期、学童期、思春期といった、成長期にある子どもの下肢の痛みを総じて呼ぶものです。かかとのシーバー病や膝のオスグッド病といったスポーツをしている子どもによくみられるスポーツ障害も成長痛と考えられる方もいらっしゃいますが、厳密には別物です。
成長痛の症状
- 夕方から夜間にかけて、早朝にも痛みが生じる
- 常に痛いのではなく、月1~2回、週1~2回など、痛みの周期が一定でない
- 学校、幼稚園にいるとき、遊んでいるときに痛みを訴えることはまれ(痛みは一時的なものであり数時間程度で解消される)
- 患部を押すと痛んだり、腫れたり、関節が動かしにくかったりといった症状がない
- レントゲン検査では特に異常がみられない
- さすったり触ったりすると痛みが解消される
上記のような状態が2週間〜1ヵ月程度継続しているときは成長痛の疑いがあります。
成長痛の対処法
成長痛は仮病ではなく、本当に痛いものだと親御さんがしっかり理解することが重要です。成長痛の正確な原因はわかりませんが、ストレスが原因ともいわれています。ストレス要因は人それぞれ異なるため、お子さんの痛みにしっかり向き合ってあげるようにしましょう。以下をお読みいただき、お子さんのストレス解消につながるように日頃から取り組んでいきましょう。
- 湿布を貼る
- 足を布団やクッションなどで上げてあげる
- 足をさする、マッサージしてあげる
- 十分な睡眠時間を確保する
- お風呂で下肢を温め、不快感や痛みが生じている部位を優しく触ってあげる
- 親子のコミュニケーションを意識する
オスグッド
オスグットとは、膝にある皿の下側の脛骨粗面が飛び出してしまうことで、腫れや痛みといった症状が起こる疾患です。成長期に激しい運動をしている小学生高学年~中学生(男の子:10~14歳、女の子:8~12歳)の子どもに発症するリスクが高いとされており、両足に症状が現れる場合もあります。
オスグッドの症状
お皿の下側の脛骨結節が段々と飛び出てきて、腫れ、熱感、痛みが生じます。
オスグッドの検査
レントゲン検査で脛骨結節の飛び出し、一部の裂離を確認します。
超音波検査では、膝蓋腱低エコー域、深膝蓋下滑液包水腫、膝蓋下脂肪体の血流シグナル、膝蓋腱周囲の血流シグナルなどを確認します。
遺残性オスグット病の場合、膝蓋腱の真下に分離骨片が確認され(分離骨片と膝蓋腱深層・脛骨粗面の間で起こっている滑液包炎によって痛みが生じるとされています)、周辺ではドプラモードで血流シグナルが確認されます。
オスグッドの治療
急性期
さまざまなストレッチやリハビリを行い、4〜6週間程度安静にします。筋力向上や筋肉の柔軟性向上によって、痛みの緩和や症状の進行抑制が期待できます。また、サポーター、テーピング、インソール療法や内服薬による治療も効果的です。
亜急性期
注射を2〜4週間に1回程度行い、痛みがほとんどなくなるまで継続します。
注射部位は以下のとおりです。
膝蓋腱低エコー域のみの場合:膝蓋腱周囲滑液包
膝蓋下脂肪体の血流シグナルがある場合:膝蓋下脂肪体に局所麻酔薬とステロイド(トリアムシノロン)5mgを注射
慢性期
注射部位を変えながら注射治療を行い、痛みがなくなるまで継続します。
なお、注射をしてもなかなか痛みが消えない場合は、遺残骨片を摘出するための手術を検討します。
オスグッドの予防
- 運動後にアイシングする
- 大腿四頭筋と太ももをストレッチする
オスグッドと食生活の関係
成長期の食生活によってオスグットの発症リスクが変わります。成長期は骨や筋肉など身体が大きく成長する時期であり、成長のためにはタンパク質の一種である「コラーゲン」が重要となります。
コラーゲンはタンパク質から合成されるため、大豆、魚、肉類の摂取量が足りないと、タンパク質が不足してオスグットの発症率が上昇するとも考えられています。日頃の食事でタンパク質を意識して摂取していると思っていても、体の成長スピードが勝っていることも考えられますので、市販のプロテインなどで補充することをお勧めします。
また、ジュースやお菓子が好きな子どもはオスグットの発症リスクが高いといわれています。ジュースやお菓子の摂取によってタンパク質の摂取量が不足してしまったり、タンパク質が劣化する糖化現象が起こったりして、筋肉や骨が弱体化してダメージを受けやすくなるとされています。このほか、鉄不足もこの病気の発症原因とされています。
成長期の子ども、これから成長期を迎える子どものことを考えて、適切な食生活を意識するようにしましょう。
足底腱膜炎
足底腱膜炎の症状
長時間の歩行やお仕事によって、かかとからかかとの内側前方にかけて痛みを感じることがあります。特に、階段を上るときやつま先立ちをしたときに痛みが悪化する傾向にあります。中年の女性に多く、起床時の最初の1歩目で痛みが生じるといわれています。歩行を続けると次第に痛みが解消し、夕方頃に歩数が増えてくるとまた痛みが生じるというのが特徴です。
運動でも同じようなことが起こり、ランニングを始めるとすぐに激しい痛みが生じ、その後次第に痛みが軽くなるのですが、さらに運動を長時間続けているとまた痛みを感じるようになります。
足底腱膜炎の原因
かかとの骨と足底腱膜が接する箇所には、大きな牽引力と着地時の荷重がかかり、これが大きな負担となります。長時間の歩行や立ち仕事、合わない靴、体重増加、運動などによって発症が引き起こされるとされています。
足底腱膜炎の診断
以下の症状に当てはまる場合は確定診断となります。
- かかとの骨と足底腱膜が接する箇所に圧痛が生じる
- 長時間の歩行、走行、立位、歩行開始などのときに、かかとの骨と足底腱膜が接する箇所に痛みが生じる
足底腱膜炎の治療
保存的治療が中心となります。
理学療法
足底腱膜やアキレス腱をストレッチします。
また、ご自身の足にフィットする靴を履き、かかとへの負担を減らすため、足のアーチを支えるインソールや中敷きの使用をお勧めします。
薬物療法
痛みを解消するために、非ステロイド系消炎鎮痛薬の経口剤や外用薬を使用します。
強烈な痛みが生じているときは、ステロイド剤を局所注射することもありますが、足底腱膜の断裂やかかとの脂肪組織の萎縮などが起こるリスクがありますので注意が必要です。
股関節痛
子どもの股関節痛
両側の足の付け根にある股関節は、人体の中で最も大きい関節です。関節痛が起こる原因は多岐にわたりますが、子どもの股関節の構造は大人のものとは異なるため、子ども特有の病気が原因で痛みが生じることがあります。
考えられる疾患
単純性股関節炎(3~8歳頃に好発)
きっかけに心当たりがなく、足の付け根から膝付近に痛みが生じます。痛みの程度は歩行に支障がない程度から歩行できなくなる程度まで個人差があります。明確な発症原因はわかっていませんが、風邪などの後に発症するケースもあります。症状は2〜3週間安静にすれば治まっていきます。
化膿性股関節炎(全年齢に発症、特に乳幼児に好発)
黄色ブドウ球菌への感染が大きな発症原因です。食欲低下、発熱、下痢、不機嫌といった全身症状が起こり、乳児ではおむつを交換するときに大泣きする、片足を動かさないということがきっかけで発症に気づくこともあります。
また、発熱などは風邪の症状でも起こりますので、注意深く観察しましょう。適切な治療が遅れると、関節が破壊されて障害が残るおそれもあります。この場合、手術が基本治療になります。
大腿骨頭(だいたいこっとう)すべり症(10~15歳頃に好発)
大腿骨で足の付け根に最も近い部分である骨頭の一部が滑る状態のことで、目で見てわかる外傷を伴う急性型、外傷がみられずに進行していく慢性型に大別されます。肥満気味の男の子に多くみられ、手術による治療を行います。
ペルデス病(3~12歳、特に4~8歳頃に好発)
成長期に大腿骨の骨端部の血流が滞り、成長障害や変形が生じる病気です。股関節のみならず膝や大腿骨にも痛みが生じることもあり、軽い痛みでも歩行に問題が起こることもあります。特に男の子の発症が多い傾向にあります。治療法は、病気、変形の程度、年齢によって変わりますが、手術療法や装具療法が一般的です。
子どもの股関節疾患は、股関節だけでなく膝や大腿骨前面に痛みが生じる傾向にあり、成長痛と勘違いして診療が遅れることも珍しくありません。軽い痛みでもなかなか症状が治まらない、歩行に異常がみられるといったときには、なるべく早めに当院までご相談ください。
早急な受診が必要な下肢の痛み
成長痛の痛みは、一過性のもので昼間に痛みが生じることはなく、痛みが生じる部位も毎日変動します。
しかし、外傷がないにもかかわらず、以下のような痛みを訴えている場合は、すみやかに専門医にご相談ください。
熱っぽさや腫れを伴う痛み
→外傷、成長軟骨の損傷、細菌の感染など
足を引きずるような痛み
→単純性股関節炎、ペルテス病(大腿骨の股関節との付け根部分の血行障害。膝に痛みが出る)、成長軟骨の損傷(骨端症)、大腿骨頭すべり症など
股関節周辺の痛み全般
→鼡径部痛症候群(グロインペイン症候群)など、安静や精密検査を必要とする疾患が原因となっているおそれがあります。
毎日痛む場所が同じ、痛みが何日も続いているというときは、何らかの疾患が潜んでいる疑いがあります。お早めにご相談ください。
当院の栄養療法・サプリメント外来
保険診療を最優先しておりますが、他院での治療や保険診療では改善がみられなかった方のために、ご希望に応じて、自費診療による「栄養療法」や「サプリメント外来」も行っております。