下肢創傷処置・下肢創傷処置管理施設
当院では、「下肢創傷処置・下肢創傷処置管理」の資格を有する医師が、治癒に難渋している足の深い傷の診療を行っています。また、当院は「下肢創傷処置・下肢創傷処置管理施設」の基準を満たしており、東海北陸厚生局に届け出ています。
難治性潰瘍とは
傷は外部からの圧力によって生じ、自然に治癒します。しかし、足に生じる傷は、生じた原因がわからず、なかなか治癒せずに悪化することもあり、こうした傷を難治性皮膚潰瘍と呼びます。難治性皮膚潰瘍の発症原因はさまざまで、治療法もその原因によって異なります。適切な治療ができないと悪化してしまうこともありますのでお早めにご相談ください。
足の傷が治りにくい原因
虚血性(動脈性)潰瘍
足の動脈の血行が悪化している下肢閉塞性動脈閉塞症(ASO)の状態のことで、喫煙・糖尿病・透析・血管炎や膠原病などによって引き起こされます。なかでも血行不良が最大の原因で、足に冷えがあったり歩行時に痛みが生じたりします。
悪化するとじっとしていても痛みが生じるようになり、やがて足の指(足趾)が黒色化してミイラ状になります。また、糖尿病の患者さんでは、痛みが生じないまま病状が悪化してしまい足が壊死するおそれもあります。治療は、心臓血管外科や循環器内科と緊密に連携しながら血行の改善を図ります。
静脈うっ滞性潰瘍(静脈瘤による潰瘍)
妊娠、肥満、立ち仕事などによって、足の静脈の機能が低下することを原因とし、また体質による影響も大きいとされています。足のむくみ、だるさを感じ、悪化すると皮膚に色素沈着が起こり硬化して、傷が何度も生じるようになります。生活習慣の見直しを基本としますが、静脈瘤の治療が必要な場合もあります。静脈瘤の治療にあたっては、提携先の医療機関と緊密に連携しながら対応いたします。
糖尿病性潰瘍
病態はさまざまですが、血行障害だけでなく、感染症や末梢神経障害などのリスクがあります。
膠原病に伴う潰瘍
膠原病が原因となって血行障害が起こるだけでなく、治療のために服用する免疫抑制剤やステロイドによって傷がなかなか治らなくなることもあります。
放射線潰瘍
放射線治療の経験がある部分に傷が生じると、なかなか治らないことがあり、該当する部位をすべて取り除くことを検討する場合もあります。また、皮膚がんの発症のおそれもあります。
皮膚がん
傷がなかなか治らない場合は皮膚がんの疑いもあり、その場合は広範囲切除を実施します。
傷の治りが遅い原因を調べる検査
さまざまな原因が考えられますが、以下が主な原因として知られています。
- 血糖値が安定していない
- むくみ
- 血行障害
- 長期的な刺激
- 感染症
- 異物の侵入
- 栄養不足
- その他
四肢血流測定、血液検査、CT検査、レントゲンなどを実施して、治癒が遅れる原因を突き止めます。
血液検査・創部培養検査
糖尿病の状態を検査したり、全身状態について検査したりします。また、組織を傷から直接採取して培養することで、原因細菌を調べます。
なかなか治らない足の傷の治療
軟膏治療
軟膏治療が基本です。現在、主に使用される軟膏は複数あり、抗菌作用をもつもの、壊死組織を取り除くもの、皮膚の隆起・肉芽を促すものなどを傷の状態に応じて適切に処方します。
抗生剤治療
感染症が原因で傷が治らないときには、抗生剤の内服治療を行います。また、炎症の状態によっては、点滴治療を行うこともあります。
創傷被覆材
創部の湿潤環境を保つ効果があります。抗菌作用をもつもの、皮膚に負担が少ない素材で作られているものがあり、容易に処置できることから利便性が高いとされています。なお、感染を起こしている傷では状況を悪化させてしまうため、ご自身の判断で使用せず、受診されることをお勧めします。
原因に対する治療
糖尿病によって傷の治癒が遅れている場合は、血糖値を適切に管理することが重要ですので、糖尿病内科・内分泌内科と緊密に連携しながら対応いたします。
血管が狭い、細い、固いといったケースでは、血行改善が最優先ですので、循環器内科と緊密に連携しながら精密検査と治療を行います。
足のむくみによって引き起こされている場合は、うっ滞性皮膚炎の治療を優先的に行います。弾性ストッキングや弾性包帯を使って足のむくみが生じないよう圧迫します。また、静脈瘤によってむくみが生じている場合は、血管外科や放射線科と緊密に連携しながら治療を行います。
症例
治療内容 |
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創傷処置(消毒、ガーゼ、薬剤の塗布)。 栄養食事の指導(高齢者ほど重要)。 |
治療期間・回数 |
約3ヵ月、12回 |
費用 |
1,560円(3割負担)、別途検査代必要。 |
考えられる合併症 |
感染、神経障害、再出血、皮膚のひきつれなど |